「たまにはエロいこととか言わないんスか?」
オレが尋ねると、赤司っちは何かを考えるような表情を浮かべる。
「涼太、それは誘ってるのか?」
「あー…」
彼から返された言葉に、オレも軽く首を傾げた。
確かに考えてみれば、文脈的にはそう取れるような気もするような。まあ、オレとしたら男同士の猥談っていうか、ちょっとエロトークでも振ってみようかなっていう出来心だったんスけど。
「まあ、そうかもしんないっスねー…」
ははは、なんてオレが笑ったら、赤司っちはわかったと言って頷いた。
え?
って言うか、何がわかったんスか?
「じゃあ、今日は目隠ししようか、涼太」
「は?」
え。え。ちょっと待ってほしいっス。
それ、どういうことスか、赤司っち!
赤司っちは本当にしつこかった。
「も…やだ…」
「嫌じゃないだろう、涼太。ほら、ここがもう泣いてるみたいだ」
って、それってどこのことっスかー!!!赤司っち!!
オレの身体を弄りながら、何言ってんスか、アンタは!
「オレの方がもう泣くっス……」
「そうみたいだな」
オレが泣き言を口にすると、目隠しの向こうで赤司っちがなんだか楽しげに笑う気配があった。
うう。これって、オレが馬鹿なネタ振った事に対するお仕置きっスよね?
帝光の頃から、赤司っちはどうもこういう報復系因果は巡りに巡って自分に戻るの教えをする傾向あるよね?
オレ、知ってる! 前からそうだった!
「こういうのが聞きたかったんだろう、おまえは」
「オレのせい……?」
なんだかエロいことを真剣にエロく言う赤司っちがちょっと怖くなって、オレはかなり心細くなって、思わず彼に尋ねてしまった。
すると、赤司っちはオレの頭にポンと軽く手を置く。
「仕方ないな……」
赤司っちはそう呟いて、オレの視界を隠していた目隠しの布を外してくれた。
「本当に泣きそうだな、涼太」
「赤司っち?」
「まあ、おまえが悪いな」
「やっぱり?」
「無闇に人のスイッチを入れるからだ」
少しだけ困ったような顔をして、赤司っちはオレの顔を覗き込む。
あ、やっぱスイッチ入ってたんスね、赤司っち。エロスイッチ。でも、入り方が唐突すぎて、ちょっとオレの方がついてけてなかったんですけど。
「だって……」
「ほら、泣くな」
呆れたように言って、赤司っちはオレの目元にそっと唇を落とした。
「……」
ちょっとこういうのはヤバい。
いきなり優しくされると、オレの方もスイッチが入りかけてくる。
「赤司っち……エロいこと、優しく言って」
「誘ってるのか?」
「そうっス」
赤司っちの首に腕を回し、オレは彼の頬に唇を寄せる。
すると赤司っちはちょっとだけ笑って、宥めるようにオレの背中をポンポンと軽く叩いた。
「わかったよ、涼太」
囁く声がもう優しい。
その声色に早く蕩けさせられたくて、オレは赤司っちに抱きつきながら、きゅっと瞼を閉じた。
(2012.8.9 pixiv初出)