今日は大仕事が待っている。
(でも、学校は休まないっと…)
いつものように通学用の指定バッグを持って学校に向かう。但し、部活用の着替え等をいれたそれはないけれど。この仕事が決まった時に、彼にはまず部活の休みの許可を申し出ている。
「赤司っち、おはよっス」
噂?をすれば影だ。
「おはよう」
オレが声をかけると学校指定の鞄と帝光バスケ部のネームが入ったバッグを持った彼はさりげなく歩調を緩めた。
これは一緒に行こうってサイン。わりと嬉しい。
「って、この前、黒子っちが言ってて」
「そうか」
教室階に辿りつくまでのわずかの間、オレと彼は他愛もない話をする。
友達、って感じでこういうの中々悪くない。
赤司っちのクラスは二階、オレは三階。これから階段を昇りきるのが惜しいくらい。
「今日は早退か?」
不意に赤司っちが尋ねてくる。覚えてんスね、オレの予定。
「そう。昼までいて、メシは食わずに帰る感じで。あ、だから今日は食堂はいかないんで、席キープは不用っス」
「ああ。分かってる」
赤司っちは薄く笑う。分かってんのに言ってくるってのは…。
「頑張ってこいよ。じゃあな」
二階に辿りついたところで彼はそう言って、スマートにオレから離れていった。
やっぱ話のフリってやつスね。頑張ってこい、なんて一言を口にするための。
「またね、赤司っち」
だからオレはわざとちょっと大きめの声で彼に言葉を投げる。
そうしたら、赤司っちは振り返らずに軽く片手をあげた。それだけでオレは中々に嬉しくなる。
(ハイハイ。そりゃもう頑張りますよっと)
軽く口笛を吹きながら、オレは自分のクラスに向かう。
気分が上がるって、オレにとっては重要なんスよ。
赤司っち、流石によく分かってる。
少し特別って感じで、こういうのかなり悪くない。
(2012.9.7 pixiv初出)